秋月カラーグラフィックLCDモジュールの解析

秋月カラーグラフィックLCDモジュール(LTA042B010F)の解析をしてみました。過程を書くのが面倒になったので、結果だけ先に書きます。(気が向いたら、後で過程も書くかも。)気が向いたので制作過程を加筆しました

なお、解析にあたっては以下2つのサイトの情報を参考にしています。

ピンアサイン

まずはCN1のピンアサインから。ピン番号はシルク印刷や秋月の独自解析情報と同じで、記号・機能は同じLTAシリーズの他のデータシートにあわせました。

ピン番号記号機能
1TESTテストパターン表示
2NCLKサンプリングクロック
3GNDGND
4HSYNC水平同期
5VSYNC垂直同期
6不明不明:入力・表示タイミングが変わるようだ
7GNDGND
8B5青表示データ(MSB)
9B4青表示データ
10B3青表示データ
11B2青表示データ
12B1青表示データ
13B0青表示データ(LSB)
14GNDGND
15G5緑表示データ(MSB)
16G4緑表示データ
17G3緑表示データ
18G2緑表示データ
19G1緑表示データ
20G0緑表示データ(LSB)
21DVDDロジック用電源
22R5赤表示データ(MSB)
23R4赤表示データ
24R3赤表示データ
25R2赤表示データ
26R1赤表示データ
27R0赤表示データ(LSB)
28AVDDアナログ用電源
29VCPP_ADJコントラスト微調整
30GNDGND
31GVDDLCDゲートドライバロジック用電源
32GNDGND
33VSSLCDゲート負電源
34GNDGND
35VGONLCDゲート正電源
36GNDGND

電源電圧

DVDD/AVDD/GVDDの電圧の選択に迷うところですが、とりあえず以下の組み合わせでの動作を確認しました。

組み合わせDVDDAVDDGVDD入力レベル
#1+5V+5V+5VCMOS
#2+3.3V+3.3V+5VLVCMOS
#3+3.3V+3.3V+3.3VLVCMOS

なお、IC5 (74HC590A)のスペックを満たすにはCMOSレベル(ないしLVCMOSレベル)の入力が必要で、TTLレベル(ないしLVTTLレベル)の入力ではスペック外となります。また、IC2 (VHD04)のスペックを満たすにはDVDDとAVDDを同じ電圧に揃える必要があります。

AVDDからR1〜R12の抵抗分圧でグレースケール基準電圧を作成しているので、AVDDが+3.3Vだと+5Vと比較してコントラストが全体的に低下する可能性があります。また後述するVR1でのフリッカー調整の範囲もAVDDが+3.3Vだとかなり限られる(部品のバラつきによっては調整しきれない可能性もある)ので、AVDDは+5Vで使用するのが無難かもしれません。

GVDDのスペックは分からないのですが、IC1 (KZ3H013304)のロジック出力がLCDゲートドライバに直接入力され、IC1の電源がDVDDであることから、GVDDとDVDDも揃えておくのが無難かと思います。

VSSとVGONは、液晶の規模から±10V〜±15V程度でしょう。通常、LCDゲートドライバの耐圧は20V以上あるので、少々大きな電圧を加えても大丈夫です。

調整

VCPP_ADJはコントラスト微調整のため0V〜3V程度の電圧を入力します。入力インピーダンスが10kΩ程度と低いので要注意。ただし入力インピーダンスの変動はないので、高抵抗で分圧してもそれほど問題はありません。

VCPP_ADJ周りはこんな回路になっています。VCOMは液晶のサブストレートに供給するコモン電圧で、この回路の次にTR2〜TR5のダイアモンドバッファで電流増幅して液晶に供給しています。VR1(LCDモジュールの背面シールド左下の穴から見える半固定抵抗)でVCOMの平均電圧を決め、VCPP_ADJでVCOMの可変幅を決めます。(ちなみに、VR1ワイパー電圧をVCOM_ADJとすると、VCOM出力電圧はおよそ 2.3 VCOM_ADJ ± (0.71 VCPP_ADJ - 0.13 VSS - 0.13) になる。)

VCOMの平均電圧が適正値から外れると、リフレッシュレートが低く表示が黒ないし暗いグレーのときに特に目立つフリッカーが発生します。黒あるいはグレースケールを表示した状態でなるべくフリッカーが少なくなるようにVR1を調整します。VR1の適正位置はAVDDとVGONの値に依存しますよって変わります

VCPP_ADJで決まるVCOMの可変幅が適正値から外れると、コントラストが過剰になったり過小になったりします。まず先にVR1を調整してから、グレースケールを表示した状態でなるべくコントラストの分布が均一になるようにVCPP_ADJの入力電圧を調整します。VCPP_ADJの適正値はAVDDとVSSの値に依存しますよって変わります

入力信号

画像を表示する場合、TESTはLに固定します。不明ピンはHにした場合とLにした場合で各種タイミングが変わるのですが、Hの場合の挙動に一貫した説明がつかないので、以下では不明ピンもLに固定するものとします。

NCLKには一定のクロックを供給します。このクロックがそのままドットクロックになるので、周波数が低いとリフレッシュレートも低くなります。LTAシリーズの他の品種のデータシートの記述から、おそらく、NCLKを停止したままにすると液晶パネルが損傷するので要注意。

NCLKのほかに画像表示時に必要な入力信号はHSYNC, VSYNC, RGBデータ(全18ビット), HSYNC, VSYNCです。これらはすべてNCLKの立ち下がりエッジでサンプリングされます。RGBデータは左から右、上から下の順番で1ライン分ずつ、上から下まで順次入力していきます。


水平同期

HSYNCはNCLKの立ち下がりエッジでサンプリングされ、サンプリングされた値がHからLに遷移したときに水平同期期間が開始します。

以下は、第(N-1)ピクセルと同時にHSYNCのHがサンプリングされ、次の第Nピクセルと同時にHSYNCのLがサンプリングされる例です。このとき、第Nピクセルから水平同期期間が開始し、107クロック後のピクセルが次のライン(*注)の第0ピクセルになります。(*注:後述する垂直同期が発生した場合には、次のラインではなく最も上のラインになります。)


HSYNCをLにして水平同期期間を開始するタイミングには幅があります。次のタイミングチャートで示すように、表示期間中である第303ピクセル〜第399ピクセルのデータと同時にLにすることも、非表示期間中である第400ピクセル〜第498ピクセルのデータと同時にLにすることもできます。


第303ピクセルと同時にHSYNCをLにすると、106クロック後のピクセル(次のラインの第0ピクセルの直前のピクセル)は第409ピクセルとなり、1ライン400410ピクセルのうち非表示期間は10ピクセル分となります。このとき、1ラインの走査期間が最小の410クロックになります。第498ピクセルと同時にLにすると、1ラインの走査期間が最大の604クロックになります。

なお、第302ピクセル以前にHSYNCをLにすると表示が乱れるので、1ラインの走査期間を表示期間だけの400クロックにすることはできません。また、第499ピクセル以降にLにしても表示が乱れます。

垂直同期

VSYNCは水平同期期間が開始してから98クロック後のNCLKの立ち下がりエッジでサンプリングされ、サンプリングされた値がHからLに遷移したときに垂直同期期間が開始します。

以下は、第Mラインの水平同期期間中にVSYNCのLがサンプリングされる例です。このとき、第Mラインから垂直同期期間が開始し、16ライン後に最も上の第0ラインが入力・表示ラインになります。


VSYNCをLにして垂直同期期間を開始するタイミングにも幅があります。次のタイミングチャートで示すように、表示期間中である第80ライン〜第95ラインの水平同期期間中にLにすることも、非表示期間中である第96ライン以降の水平同期期間中にLにすることもできます。


第80ラインの水平同期期間中にVSYNCをLにすると、15ライン後のライン(第0ラインの直前のライン)は第95ラインとなり、非表示ラインを一切置かずに1画面96ラインを表示することができます。このとき、1画面の走査ライン数が最小の96ラインになります。(1画面の最大走査ライン数は分かりませんでした。とりあえず250ラインまで試してみたのですが画面は乱れませんでした。)

テストパターン表示

NCLKの立ち下がりエッジでTESTがLの場合、HSYNC, VSYNC, RGBデータ(全18ビット), HSYNC, VSYNCの入力データが内蔵テストパターン生成器の出力に切り替わり、テストパターン生成器にクロックが入力されます。

テストパターン生成器は1ライン512ピクセル、1画面269ラインでテストパターンを生成しますしているようです。生成するテストパターンはG[0..5]で指定されます。また128画面を生成するごとに繰り返しパターン番号を更新します。G[0..3]がすべてLの場合、この繰り返しパターン番号とG[4..5]で決まるテストパターンが順次表示されます。

テストパターンの内容は以下のとおりです。

番号G5G4G3G2G1G0パターン
00LLLLLL02,01〜07の繰り返し
01LLLLLH
02LLLLHL
03LLLLHH
04LLLHLL
05LLLHLH
06LLLHHL
07LLLHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
08LLHLLL
09LLHLLH
0aLLHLHL
0bLLHLHH
0cLLHHLL
0dLLHHLH
0eLLHHHL
0fLLHHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
10LLLLLL12,11〜17の繰り返し
11LLLLLH
12LLLLHL
13LLLLHH
14LLLHLL
15LLLHLH
16LLLHHL
17LLLHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
18LLHLLL
19LLHLLH
1aLLHLHL
1bLLHLHH
1cLLHHLL
1dLLHHLH
1eLLHHHL
1fLLHHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
20LLLLLL22,21〜27の繰り返し
21LLLLLH
22LLLLHL
23LLLLHH
24LLLHLL
25LLLHLH
26LLLHHL
27LLLHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
28LLHLLL
29LLHLLH
2aLLHLHL
2bLLHLHH
2cLLHHLL
2dLLHHLH
2eLLHHHL
2fLLHHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
30LLLLLL32,31〜37の繰り返し
31LLLLLH
32LLLLHL
33LLLLHH
34LLLHLL
35LLLHLH
36LLLHHL
37LLLHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン
38LLHLLL
39LLHLLH
3aLLHLHL
3bLLHLHH
3cLLHHLL
3dLLHHLH
3eLLHHHL
3fLLHHHH
番号G5G4G3G2G1G0パターン


制作過程(その1:苦闘〜テスト動作〜失敗編)

くだんの
秋月カラーLCDモジュールの背面シールドのハンダ付けを外すと、コントロール基板はこんな感じ。


この右下にあるCN1から信号を入力します。どうやって信号を与えるか迷うところですが、ひとまずなる研方式にCN1のコネクタをとっぱらい、そこにワイヤをハンダ付けすることにします。

CN1のアップ


コネクタを外してワイヤをつけ始めたところ。部品を外すのは簡単なんだが、ワイヤを付けるのが一苦労なんだなぁ。


ブレッドボードで使いたかったので、ちまちまとピンヘッダを付けてみた(笑)


このLCDモジュールはCCFLバックライトを点灯させないと暗すぎて何を表示しているのか全然分からない。よってバックライトを点灯させるための細工も必要になる。

秋月CCFLインバータを接続するため、バックライト用のコネクタを外してみた。


赤いほうのケーブルがホット側なのですが、被覆を剥いた内側にさらに絶縁内被(シリコン製?テフロン製?)があり、これが固いわ滑るわで非常に剥きにくかった。コネクタのコンタクトを残しておいて、そこにハンダ付けすればよかったが・・・後の祭り。

インバータも接続。


剥き出しだと電撃が怖いので、紙製絶縁体wで包囲絶縁wwしてみた。


ブレッドボードに回路を組んで・・・


電源を投入すると・・・映った!


この状態でいろいろ試してみた。


ブレッドボードから何度も抜き挿ししているうちに、一部ワイヤのハンダ付けが外れてしまった。そのせいかどうか、基板から煙が・・・

このチップトランジスタから発煙!


TR2〜TR5で構成するダイヤモンドバッファでLCDにVCOMを供給しているので、そのうち1個が壊れると全く映らなくなる。これはマズい・・・しかし、チップTrの代替品なんて持ってない。そこで・・・

定番中の定番、2SC1815様の登場です!


壊れたチップTrを外して・・・


こんなふうに取り付けてみた(笑)


・・・のですが、電源を入れたところ、今度はこの2SC1815様が発煙してお亡くなりになりました orz


制作過程(その2:いらん苦労〜成功編)

どうやら本格的に他の場所も壊れたようなので、これは破棄して改めて別のLCDモジュールを加工することにしました。今度はワイヤ直付けではなくフレキケーブルでの接続を試みます。

フレキケーブルはALTERAで行こう!の「サンハヤトのフレキシブル基板が代用できるという情報」もあったのですが、強度に不安がある(曲げ伸ばし耐性が低いらしい)のと値段がけっこうする(800円くらい)ので最終手段に取っておくことにして、まずはまっとう(?)に0.5mmピッチのフレキケーブルを使うことにしました。

日米商事で探してみると0.5mmピッチ40ピン35mm長のフレキケーブルがあったので10枚購入。(1枚15円だったかな?21円だった。)フレキケーブルの片方を36ピン分の幅にハサミでカットして使うことにする。

ちなみに下の画像は、上面(見えている側)が接点面。まぁ普通見れば誰でも分かると思うが、念のため。


同じく日米商事で、0.5mmピッチ40ピンフレキケーブルコネクタがあったので、これもあわせて10個購入。(こっちは1個20円だったかな?こっちも同じく1個21円。


フレキケーブルをコネクタに噛ませてみたところ。ちょっといい感じ。


やはりいろいろ試して遊ぶにはブレッドボードを使いたいので、ユニバーサル基板に0.5mmピッチコネクタと2.5mmピッチピンヘッダを載せて変換アダプタを作成します。使う部品はこんな感じ。


まずはコネクタ側の全ピンにワイヤをハンダ付け。36ピンもあるので手間が大変だが、作業自体は慣れてきたせいもあって割とスムーズに進んだ。


ピンヘッダ側をハンダ付けして完成。コネクタ付近は触っても外れないようにホットボンドで固めました。(上の写真と下の写真で基板が違うことに気付いたあなたは鋭い。実はいっぺんミスって、またもや作り直したのです。0.5mmピッチをまたハンダ付けするのはメゲた・・・)


CCFL用インバータも付け直さないといけないので絶縁を解除した(包み紙を開いた)ところ・・・インダクタのコアが割れていた!


しょうがないので、磁路を妨害しないように(という祈りを込めつつ)瞬間接着剤を薄塗りして接着w


あとはインバータを付け直して準備万端。煙の出たLCDモジュールのかわりに今回制作の変換アダプタをブレッドボードに挿して、フレキケーブルでLCDモジュールを接続したところ、問題なく出画。

よかった、よかった。



5/22/2007 作成
7/28/2007 表現を修正(修正箇所は取り消し線追加で表示)、制作過程を追加
9/7/2007 フレキケーブル周りの価格を修正


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